目安全協の取りまとめ延期に抗議 厚労省へ申し入れ

最低賃金大幅引き上げキャンペーンは2月7日、最低賃金審議会の運営方法や最低賃金の決定方式について厚生労働省に申し入れしました。厚労省からは3名が対応しました。

目安全員協議会の遅れは許されない

中央最低賃金審議会目安の在り方に関する全員協議会は、2021年度に現在のランク制をどうするかとりまとめる予定でしたが、2022年度へと先送りされました。

厚労省は、2021年度の改定審議の際に目安小委員会と本審で、異例の採決が行われたため、十分審議を尽くせるよう努力していたと説明しましたが、制度的に採決にすることは予定されており、2020年5月から一度も審議できなかったことに抗議しました。

審議会の公開の徹底を

厚労省は原則公開としながら、各労働局では、非公開とする理由を無制限に広げています。ウェブ上に公開された議事録の中に、委員の名字が黒塗りになっている例を示して改善を求めました。

委員選出の基準を明らかにせよ

最低賃金審議会は、最低賃金近傍で働き、その影響を大きく受ける当事者が参加させるべきです。

委員の選出は「総合的に判断している」「全労連を排除しているわけではない」と答えましたが、現実とは異なります。「どうしたら委員に選出されるのか」との問いかけにも答えはありませんでした。

要請書は、以下のとおり。


要 請 書
厚生労働大臣 後藤茂之 殿
2022年2月7日
最低賃金大幅引き上げキャンペーン委員会
(連絡団体:下町ユニオン/生協労連/全国一般全国協議会/郵政労働者ユニオン)

貴職の日夜にわたる労働基準行政に対する取り組みに敬意を表します。 
 
 貧困の拡大のなかで、最低賃金の社会的重要性は、ますます増しています。最低賃金のあり方が根本的に問われる情勢になっていると私たちは考えています。厚生労働省には、これまでの延長線上ではなく、最低賃金制度の根本的な改善に向けて大きく構えた行政を進めていただきたいと強く願っています。

(1) 最低賃金審議会目安全員協議会の開催について

1.中央最低賃金審議会の目安全員協議会の結論を令和3年度中にまとめるとされていたのが、突如として令和4年度中にとりまとめるという変更が提案されたことは大変問題があると考える。この提案通りに変更されたのか否かの事実関係を明らかにされたい。もし、変更されているならば、全労働者の賃金水準、特に低賃金労働者への影響が絶大な最低賃金の決定方式についてのとりまとめが延期されたことについて強く抗議し早期の取りまとめが必要である。

2.審議会の公開の不徹底の是正を求める。上記の延期についての情報も、目安全員協議会の開催される当日にホームページに突如として出されたもので、重要な議案についての発表の仕方として適切なのか。事前の告知を早めることを求める。

(2)中央最低賃金審議会および地方最低賃金審議会の審議の公開について

1.中央最賃審議会の公開の度合いは、厚労省管轄の他の審議会と比べても公開の度合いが低いのではないか。たとえば、社会保障審議会は、議事録で全面公開されている。ところが、最賃審議会については、「目安に関する小委員会」など実質的な審議は非公開となっており、審議過程が不透明になっている。傍聴、議事録も含めて完全公開すべきではないか。また、国会中継と同様にインターネット中継と録画を検討すべきではないか。傍聴については、希望者全員の傍聴を認めるべきではないのか。
また、議事録が答申後速やかに公開されれば、それに基づき異議申し出ができる。答申後4~5日程度で議事録の公開を検討すべきではないか。

2.審議会の開催、意見書や異議申し出の扱い、審議会委員の推薦公示など、最低賃金審議会に関する重要事項はすべてホームページに掲載することが必要ではないか。

(3)中央最低賃金審議会および地方最低賃金審議会の委員の選定基準について
1.最低賃金審議会委員の任命基準が不透明である。特に、低賃金で働く当事者が入っていないことは重大である。たとえば、障害者や女性についての審議会が開かれる審議会があった場合、その審議に障害者団体や女性団体からの代表が参加するのが当然である。にもかかわらず最低賃金審議会はそうなっていない。最低賃金に近い水準で働く非正規労働者なども委員に加えるべきではないか。

(4)最低賃金の決定方式の改定について
1.最低賃金が使用者の「支払い能力」を考慮するという規定が存在することにより、労働者の生活を支える最低限の水準になっていない現状がある。「支払い能力」条項は削除すべきではないか。

2.全国一律ではない最低賃金制度を採用している国は、ごくわずかである。日本の最低賃金の地域間格差が、地方から都市部への労働力の流出を招き、地方の経済・社会の疲弊を招いているという指摘がなされている。しかしながら、現行の最低賃金の決定方式では、この格差を縮めることが困難となっている。ランク制は廃止し、全国一律の最低賃金制度にすべきではないか。

3.日本政府も批准しているILO131号条約及び135号勧告には、最低賃金水準の決定にあたり考慮すべき要素として、「労働者と家族の必要」とあるが、「生活保護との整合性」において、審議会で比較しているのは若年単身者の生活保護基準である。ILO条約の趣旨に合致していないのではないか。厚労省の見解を明らかにされたい。

以上