最賃年2回改定を求め厚労省に申し入れ

最低賃金大幅引き上げキャンペーン委員会は10日、最低賃金の年2回改定を求めて厚生労働省に申し入れを行いました。

厚労省の担当者は、「最低賃金は物価だけでなく、賃金や企業の通常の支払い能力を考慮して決めている。年2回以上の改定は意見として受け止める」と述べるにとどまりました。

最低賃金大幅引き上げキャンペーン委員会 厚労省申し入れ 2024年12月10日

厚生労働大臣

福岡 資麿 殿

低賃金労働者の意向を反映した最低賃金の改定を求める要請

= 年2回以上の改訂で、早急に1,500円以上の最低賃金の早期実現を求めます

2024年12月10日 

最低賃金大幅引き上げキャンペーン委員会

政府は「2020年代に全国平均時給1500円を達成する」としているが、低賃金労働者の生活実感からすれば遅すぎる。実質賃金が低下していることは、賃上げが物価上昇に追いついていないからである。とりわけ低所得者層にとって、生活必需品などの物価高騰は生活の困窮化を招いている。

この間の最低賃金審議会の審議は「最低賃金の引き上げは物価上昇を下回るものであってはならない」という大原則を守ろうとしながら審議していることは理解できるが、結果はそうなっていない。一般的な経済指標をもとに議論することでは限界がある。もっと、最低賃金近傍で働く人の声を聴き、低所得者層の生活実態に合わせた調査を行って最低賃金の引き上げを行うようにすべきである。

以下、申し入れる。

1 全国一律1500円を数年のうちに実現すること。その道筋を明らかにすること。

 ランク制は、1975年に当時の労働4団体の統一要求であった全国一律制を実現するには地域間格差が大きいので、4つの地域に区分をして段階的に格差を縮小していくためにつくられた制度である。当初は地域間格差が縮小していたが、最近は地域間格差が拡大している。そのため、目安額を上回る改定が行われている。ランク制は破綻していると言わざるを得ない。

  1. 時給1500円に至る道筋が明確に示されていない。ただちに、どのような水準・内容・テンポで引き上げていくのかを示されたい。
  2. その際、全国一律に近づけるための手立てがどのようになされるのかについても示されたい。

2 最低賃金の改定は年2回以上行うこと。そのための予算を確保すること。

非正規雇用労働者などの賃金改定は10月に行われることが多い。6月調査にもとづく第4表は小零細企業従業員の賃金を反映していない。また、そもそも大企業と中小零細企業の賃金格差を前提とした最低賃金の決定の仕方は、同一労働同一賃金の原則に反するものであるし、賃金格差を固定化するものである。急激な物価上昇が続いている状況では、年2回の改定検討が必要である。また、物価高の激しい進行の下で、最新の経済データを元にして引き上げの議論をすることは審議会の責任であると考える。

(1)消費者物価指数の参考基準を低賃金労働者の生活実態に合ったものにすること。生計費については、「持家の帰属家賃を除く総合」指数・「基礎的支出項目」指数を採用するだけでなく、「頻繁に購入する品目」指数を最重視すること。またこの間、諸団体が行っている生計費調査を参考にすること。

(2)「類似の労働者の賃金」として、賃金状況調査は、30人未満の中小零細企業を調査対象としているが、最低賃金の影響率が年々上がる中で、指標として適当なものではなくなっている。最低賃金の影響率が1~2%であった時から、現在では、20%になろうとしており、中小零細企業の労働者の賃金引き上げ率を「類似の労働者の賃金」とみなすには無理が出ている。急速に拡大する大手企業の非正規労働者の賃金など、対象事業所を拡大し調査すべきである。また、賃金中央値や平均値を指標とすることを検討されたい。

(3)最低賃金の改定を年2回、10月と4月に行うこと。10月に昇給する労働者が年々増加しており昨年は33%を超えている。賃金状況調査を6月だけでなく12月にも行うこと。そのための予算を確保すること。

3 最低賃金は、生活保護水準を上回るようにすること。

(1)地域間格差を無くし直ちに全国一律最低賃金制度に向けた検討を行い、1,500円以上の最低賃金を実現すること。率でなく額での地域間格差縮小を目指し、早急に実現する道筋を明らかにすること。

(2)最低賃金の水準は、ILOの基準に基づき、「労働者とその家族の必要」との観点で生活保護との比較を行い、ひとり親世帯の生活保護基準を上回るものとすること。

 最低賃金と生活保護との整合性は2007年改正の趣旨である。時間給を基本とする最低賃金と月収を基本とする生活保護とをどのように比較することが整合性なのか問題点は多い。ILO131号条約は「最低賃金は労働者と家族の必要な生計費」と規定している。生活保護との比較は「成人ひとりと一子」をモデルにし、最低賃金水準は、生活保護では考慮されていない公租公課(税・社会保険など)を上乗せして、生活保護水準の1.3倍を上回るものでなければならない。

4 最低賃金引き上げの妨げとなる要因を排除するとともに、要員排除に伴う不利益に対する援助・支援を行うこと。

  1. いわゆる「事業者の支払能力」は、個々の事業者の支払能力ではないことを再確認すること。
  2. いわゆる「103万円の壁」「106万円の壁」など税制、社会保障制度の「壁(檻)」を取り払い、世帯単位から個人単位の制度に改めること。
  3. 最低賃金引き上げ分を価格転嫁できるようにし、発注者に受諾義務を課すこと。また、発注期間中の改定も行えるようにすること。

5 最低賃金審議会のすべての審議を公開するとともに、最低賃金に関する多様な意見を反映できる民主的な審議を行うこと。

(1)地方最低賃金審議会の審議を民主的に行い、最低賃金に関する多様な意見を反映できるものにすること

(2)二者協議を記録している審議会は少数である。二者協議は非公開であったとしても、記録すべきものであることを明確にして、都道府県労働局に対して指導すること。

(3)公労使三者が集まって議論を行う議事を公開しないケースがある。議事の公開が議論になるのは目安審議における議論のプロセスが見えづらいことが原因であり、審議の透明性や納得感を高めることが求められていることを理解していない対応である。都道府県労働局に情報提供を繰り返し行い、また、公開状況について調査すること。

(4)専門部会において二者協議だけで審議を進行させ、審議の不透明なケースがある。議論の過程を明らかにした議事進行を行い、三者協議を公開にした趣旨を生かすよう、情報提供を繰り返し行うこと。

(5)審議会において意見を述べようとする者に対して口頭で陳述を行わせて質疑応答を積極的に行うことや、委員自らが事業場に出向いて視察するなど、外部からの多様な意見を得る努力をさせること。

(6)議事録や議事要旨の公開が速やかに行われていない。いつ公開されたか調査し、実態を把握すること。

(7)都道府県労働局は、議事録の情報公開請求に対して不開示にしすぎる傾向があるので、指導すること。

(8)生活困窮者の支援等を行っている団体の出身者、及び社会保障法を専門とする学者、中小零細企業労働者・非正規労働者・外国籍労働者を数多く組織する労働組合の関係者などを委員に任命すること。

(9)中央最低賃金審議会に対して意見書を提出する予定であるが、その際に口頭陳述を希望するので、どのように運営するのか委員を含めてあらかじめ検討しておくこと。

6 中央並びに地方の最低賃金審議会の選出にあたっては、最低賃金大幅引き上げキャンペーン委員会が推薦する者を任命すること。

以上