岩手県最低賃金は2023年10月4日に4.6%引き上げて893円に改正されましたが、全国で一番低い水準となっています。また、盛岡市の「持家の帰属家賃を除く総合」は、対前年同月比で、8月分5.2%、9月分5.1%となり、物価上昇率が最低賃金の引き上げ率を上回っています。
このことから、全国労働組合連絡協議会東北協議会、全国一般労働組合全国協議会、共生ユニオンいわては2023年12月11日、岩手労働局に対して最低賃金審議会に対してふたたび改正の諮問をするように要請しました。
また、岩手県に対しては岩手労働局に岩手県最低賃金の再改正を働きかけるよう求めました。
地域別最低賃金 再改正の要請
岩手県最低賃金は、2023年10月4日に改正され、39円(4.6%)引き上げ、893円になりました。この39円という引き上げ額は、全国で最も低い引上げ額であり、しかも、改定後の金額893円は全国最下位になりました。
2022年10月の岩手県最低賃金の改定は、33円引き上げ854円でした。最低賃金の引き上げ率は4.0%で、総務省消費者物価指数の2022年10月における盛岡市の「持ち家の帰属家賃を除く総合」の物価上昇率3.9%を上回っていましたが、2023年1月には5.5%となり、消費者物価指数が最低賃金の引き上げ率を大きく上回ってしまいました。
今年の中央最低賃金審議会の目安の議論では、消費者物価指数が最低賃金の引き上げ率を上回ったことが大きな問題となり、中央最低賃金審議会は公益委員見解の地方最低賃金審議会に対する期待等の中で、「今年度の目安額は、最低賃金が消費者物価を一定程度上回る水準である必要があることや、これまで取り組んできた地域間格差の是正を引き続き図ること等を特に考慮して検討されたものであることにも配意いただきたいと考える。」と述べています。
2023年10月の岩手県最低賃金の引き上げ率は4.6%でしたが、総務省消費者物価指数における盛岡市の「持ち家の帰属家賃を除く総合」は、対前年同月比で、8月分5.2%、9月分5.1%と、既に最低賃金の引き上げ率を上回っています。最低賃金審議会は、最低賃金の引き上げが物価上昇率よりも低いことによって、最低賃金に近い賃金水準の労働者の生活は大変な苦境に立たされていることを十分考慮しなければなりません。まして、2年続けて物価上昇率が最低賃金の引き上げ率を上回る事態になっていることを重大な問題として認識すべきです。
今年度の最低賃金の改定の特徴は、地域間格差の是正が大きな問題となり、Cランクの引き上げ額がA・Bランクを大きく超えたことです。岩手を除くCランクの引き上げ額平均は44.8円であり、39円の岩手とは大きな差がついています。中央最低賃金審議会の公益委員見解では「目安は、地方最低賃金審議会が審議を進めるに当たって、全国的なバランスを配慮するという観点から参考にされるべきもの」とされています。今年度の最低賃金の決定において岩手県の決定は、中央最低賃金審議会の目安を強く意識して議論されたものと推察しますが、他のCランクの地方では、地域間格差是正が強く打ち出され、目安を大きく上回る決定がおこなわれました。その結果、全国的なバランスという点で、岩手県の決定は極めて不十分であったと言えます。
最低賃金法第12条には「厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、地域別最低賃金について、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して必要があると認めるときは、その決定の例により、その改正又は廃止の決定をしなければならない」とあり、改正は年1回や、毎年10月の改正と決まっているわけではありません。最低賃金決定の3要素(生計費・賃金・支払い能力)を考慮して、最低賃金の改正の必要があると認めるときに改正することが決められています。3要素の中で、最も優先されるべき生計費、物価が高騰している状態を、緊急事態と認識すべきです。
岩手では、2年続けて物価上昇率が最低賃金の引き上げ率を上回る異常な事態になっています。また、今年10月の岩手県の最低賃金の改正は、全国的なバランスから見て、引き上げ額が極めて不十分な金額であったというべきであり、こうした状況は、まさに最低賃金の改正の必要があると認めるべきです。今のままでは、岩手県は、最低賃金の最も低い県としてクローズアップされ、若者等、労働者の県外流出に拍車をかけることになりかねません。
年内に最低賃金法第12条に基づき、労働局長が岩手地方最低賃金審議会に地域別最低賃金の再改正を諮問するよう強く要請します。