最低賃金審議会に参加する委員からは、公益委員が時々の事情に大きく左右され、議論を導くと言われています。しかし、地方ごとに運営されるはずの審議会は、そうなのでしょうか。各労働局の担当者(事務局)の意向が強く出ているのではないかと考えています。
非公開で進む審議
最低賃金審議会は、一部を除き、具体的な金額審議を行う専門部会は、非公開にされており傍聴することができません。また、交渉部分については、「休憩」「個別折衝」として、議事録にすら記録されません。
労使のやりとりだけでなく、公益委員と事務局のやりとりもわかりません。形式的な役割分担だけで、筋書きを事務局が用意している可能性があります。
山口地方最低賃金審議会で公益委員を務めた松田弘子弁護士は、取材に対して、「改定審議は形骸化している」と述べています。
委員就任は、任期途中に辞められた前任の弁護士に頼まれて引き受けたのがきっかけ。審議に関わっているうちに最低賃金の大切さを実感した。でもその割に審議は形式的で、意見を言う人は煙たがられる。何も言わずに帰る人が好まれる席なのだということが分かった。
どの回も労働局が作成したシナリオがあり、公益委員と事前の打ち合わせをしていた。そこに書かれていた「異議なし」の記載通り、実際の審議でも「異議なし」との発声があり、事前に事細かに決めていたようである。最初はこれが最賃の改定審議なのかと大変驚いた。
また、長野では、金額の答申予定日に事務局が主導して、懇親会を行っていたことがわかっています。
これは、2017年7月31日に開かれた長野地方最低賃金審議会の第3回本審議会の議事録ですが、異議申立ての審議が行われる前なのですから、決定内容や審議の進め方に疑いを持たれるのは、当然でしょう。
最低賃金を決める議論は、すべての労使にとって重大な関心事です。議論は公開し、真剣に行うべきです。